広島のカキ

【出張レポート 】

The first business trip report

期間: 平成16年8月24日(火)~25日(水)
訪問先: 広島県佐伯郡・豊田郡
目的: カキの養殖場(寺浩水産有限会社)
カキの加工場(山下水産株式会社)の見学

カキの養殖(寺浩水産)

3年間、手間隙をかけて育てる

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カキの育成に3年も要するということを、私は今回初めて知った。しかも作業の多くは手作業であり、まさに手間隙をかけて育てているのだと感じた。
更に今年は大変な猛暑で雨も降らなかったため、大変だったと聞いた。海水温が上がると海水の塩分濃度も高くなり、カキは酸欠になってしまう。さらに産卵 もしないそうである。従ってカキ(業者)にとって、海水の温度を下げ、循環させ、また弱いカキを間引く役割を果たす台風は有難いということで、改めて自然 を相手にする職業の大変さを感じた。

養殖の過程

  1. タネを付ける(産卵期に海中で、針金に通したホタテの貝殻に卵を付着させる。
  2. 抑制期間(最低60日間、潮の満ち干がある場所で棚に吊るし、弱い物を間引く。
  3. 筏に仕込む(約10mの針金に20~30cmの間隔をおいてホタテの貝殻を通し海中で育成する。最低6,7ヶ月)
    ・・・これらの過程を経て・・・
  4. カキの浄化(付着物を落とし、一晩海水に沈めておく)
  5. 剥き身にする(すべて手作業)
  6. 洗浄する(水槽)
  7. 重量毎に選別する(機械による)
    ・・・という加工の工程を経て出荷される

カキの加工(山下水産)

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毛髪の本数をチェック

工場に入るにあたり、白衣・帽子(ネット)・マスクを着用し、そして手洗い・消毒を行った。白衣に付いた毛髪の本数まで記録するなど、 衛生管理の徹底ぶりがうかがえた。山下水産はチッソ凍結を含め、品質管理の体制が非常に整っているとのことであったが、まず工場に入るまでの間にもそれが よくわかった。

冷凍カキの加工の流れ

  1. 原料のカキをチッソ凍結する
  2. 重量別に分類する(人の手によるものと機械によるものと両方ある)
    そして冷凍カキフライの場合は、
    2と3の間に
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    1. 40℃の湯で表面の氷を溶かす
    2. カキ殻等の有無を手指点検する
    3. 打ち粉(小麦粉)を付ける
    4. 一時的に凍結保存する
    5. バッター液につける
    6. パン粉を付ける

    という工程を挿む。

  3. トレイに並べ、X線でカキ殻等の異物をチェックする
  4. 袋詰めをする
  5. 金属探知機にかける

チッソ凍結(-170℃)

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チッソ凍結とは、山下水産が強みとしているカキの加工の技術である。具体的には、液体チッソを用いて短時間で凍結させる手法である。気化チッソは約 -170℃であり、緩慢凍結(約-40℃)と異なり、凍結する最中にカキのエキスが流出せず、鮮度が保たれるということだ。
カキのシーズンは早くて10月から、ピークは11、12、1月(しかし本当に美味しいのは2、3月ということだ)であるが、この技術のおかげで夏でも同じ美味しさを味わうことができる。


その後製品の品質検査を行うということで、検査室や機械等も見せていただいた。検査するのは、

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  1. 一般生菌数
  2. 黄色ブドウ球菌
  3. サルモネラ菌
  4. 腸炎ビブリオ菌
  5. 大腸菌


消費者の食の安全性に対する意識の高まり

これだけの工程を経てやっと製品化され市場に出回るのだが、製品になってしまうと、チッソ凍結したことも、作業の各工程においての品質 管理を徹底しているということも外見だけでは判断できない。そうすると消費者はより安価なものを選んでしまう傾向にある、と山下社長はおっしゃっていた。
安価なカキといえば現在は韓国産のものが多く出回っているらしい。タネは日本のものを用いるようになったため、外見も日本産と大して変わらないものが多く採れるようになったからである。
しかし、近年様々な食品の産地偽装事件などが相次ぎ、少しずつ一般の消費者の、食の安全に対する意識が高まってきている。それに伴って「国内産であるこ との証明を」という要望も高まってきているということであった。こういった要望が増加するということは業者にとっては大変なことでもあるが、反対に元から こだわりを持って高品質なものを作っている山下水産のような業者にとってはその努力が認められる、願ってもないことなのではないかと思った。

出張を終えて

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今回の出張は私にとって初めての経験であり、また食品を扱う施設を見ることも考えてみれば小学校の社会見学で行ったパン工場以来であるから、比較する基準 というものがない。したがって今回見せていただいた場所が一般的にはどう評価されるのかは正直わからない。しかし、外部の人間に内部のことをこれだけ堂々 と見せることが出来ると言うことが、安全にもおいしさにも自信を持っていることのなによりの証拠であると感じた。
前述したとおり、近年消費者の食の安全性に対する意識は高まってきている。しかしそれだけにメディアに翻弄され、正しくない情報が伝わってしまうといっ た問題も数多くあると思う。したがって、生産者と消費者の両方の顔が見られる、つまり生産者と消費者をつなぐ立場である私たちが正しい知識と情報とをもつ のは非常に重要であると思った。
私は今回広島に行くまで、カキについては本当に無知であったが、だからこそ色々な疑問を持ちながら見学することが出来た。沢山の知識は必要であるし、これから様々なことを吸収していきたいが、現在の、まだ一般の消費者である感覚も忘れずにいたい。