亀和の仕事とやりがい

1日の仕事の流れとやりがい

3:00


築地の朝は早い。
目利きの仲買人たちが、虎視眈々と最上の獲物を狙って、独特な符丁が四方八方から飛び交う。競りに参加できるようになるには、経験を積み重ねることが必要だ。大好きな魚と一番最初に出会えるのは、一朝一夕にできることではない。築地の熱気が睡魔や寒さを吹き飛ばし、爽やかな汗が頬を伝わってくる。

競り落とした魚に包丁を入れる瞬間、この仕事を選んだことに間違いなかったと、思わず快心の笑みがこぼれる。透けるようにさばける技術を磨き、大切な魚を余すところなく活かしきる。お客さまの喜ぶ顔が目に浮かび、指先に細やかな神経が注がれる。刃先に残った魚の身をつまむと、口の中でとろけていくようだ。

6:00


出荷準備が整うと、お客さまへの配送が待っている。亀和商店では16台の冷凍車、冷蔵車がフル稼働して、ベストな状態で食材を届けている。厳しいシェフや板前さんが、満足げに頷いてくれるから、握るハンドルも軽くなる。お客さまの言葉を聞き逃さず、謙虚な姿勢で勉強することが、プロへの道に繋がっていく。

築地に集まる人々も多い。
お客さまの一人ひとりが目の肥えた専門家だから、陳列した魚貝類の品質には万全の注意を払う。「さすがに亀和だね」と声をかけられると、嬉しさより先に気持ちが引き締まる。創業以来築いてきた信頼を失わないよう、日々の仕事に全力投球しなければならないと、スタッフ全員が受けとめる。

14:30


大切なお客さまを説得し、展示会や商品説明会を開くのも、営業スタッフの重要な仕事だ。魚貝の良さを理解してもらうため、プレゼンテーションの実力が試される。亀和商店では経営コンサルタントを招き、企画立案から交渉まで、わかりやすく具体的に指導する。お陰さまでお客さまの評判も上々である。

亀和商店の加工場では、入荷した魚をすぐに加工し、ベストの状態で保存している。熱心なスタッフは新製品を開発しようと、遅くまで試行錯誤を繰り返している。納得できる仕事を提供したい、その一途な想いが時間を忘れさせ、ひたすら仕事に打ち込ませる。

18:30


夕暮れ時の築地市場は、どの店舗もシャッターを下ろし、人影もまばらである。しかし、お客さまからの注文や問い合わせは、この時刻から盛んに行われている。電話だけでなく、ファックスやメールなど、あらゆる情報を整理するのは、魚が大好きで集まったアルバイトスタッフたち、どの顔も輝いている。

24時間眠らない大東京のど真ん中、築地で働いていると、世界はひとつと実感できる。グローバルスタンダードと小賢しい言葉を用いなくとも、海は昔から広くて大きく、私たちに無限の恵みを与えてくれてきた。潮の香りと魚の群れに囲まれて、生き甲斐を得られるのは、この仕事の醍醐味である。