アラスカ出張レポート02

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アラスカトロールサーモン加工業者組合(略称ATSPA)の招待を受け、アラスカトロールサーモンを視察。

期間:2005年7月29日~8月5日
場所:ジェノー、フーナ、シトカ、ケチカン、シアトルアラスカトロールサーモン加工業者組合
(Alaska Troll Salmon Processors Association)

ATSPAは5社から成り立ち、EUと日本で天然釣りキングサーモンと銀鮭のプロモーションを行っている。
Triad Fisheries Ltd.
Hoonah Cold Storage/Northem Products
North Pacific Processors/Sitka Sound Seafoods
Seafood Producers Cooperative
E.C. Phillips & Son

アラスカシーフードマーケティング協会(ASMI)

「アラスカ産シーフード全てが天然でヘルシーかつ安全な食品」

であることをアピール・差別化を図り、展開している。

1981年に設立されたアラスカ州全ての漁師と加工業者が会員。
半官半民非営利マーケティング団体として、現在アメリカ政府からの補助金、ならびに業界メンバーからの拠出金でアラスカ産シーフードの宣伝普及活動を展開 している。米国を含む世界20カ国と地域のなかでも、日本はアラスカ水産業界にとって最大の市場である。アラスカ産サーモンの輸出促進活動を目的に日本で は1987年に連絡事務所が設立された。
なお、1997年7月からアラスカ産シーフード全魚種を販促対象とし、日本の輸入業者、取り扱い流通業者、量販店、小売店などフードサービス業界に対しアラスカ産シーフードの拡販とサービスを提供している。

加工施設の視察 – Northem products –

・・・1958年に家族で経営を初め、1986年に施設を買い取り現在に至る。
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チャーター機を降り、車で10分ほどの場所に Northem Productsの加工場がある。海の真上にあり、建物は木で組み立てられた柱の上にある。私たちが加工場に到着した時、ハリバット(オヒョウ)を船からあげていた。人より大きなサイズもあるようだ。
ヘッドレスの魚をサイズ毎に分け、冷凍庫へ。-40℃の中に入れ、10~12時間冷凍する。Northem Productsには3つのフリーザーがあり、1日で5万ポンド冷凍する。冷凍庫内では一部のサーモンに冷風が当たらないよう配慮するなど空調管理を行っている。

シアトルへ出荷

冷凍されたサーモンは2尾ずつ並べられ、少量の砂糖が入ったグリーズと呼ばれる水の中を数回くぐらせる。箱詰めされたサーモンはシアトルへ向け出荷される。

加工施設の視察 – E.C. Phillips & Son –

・・・1926年に設立、現在の従業員は200人以上。加工場ではチャムと銀鮭の作業をしていた。
アラスカで最も大きな加工場であり、カナダ、ヨーロッパ、アジア方面へ出荷している。

取り扱い商品:

銀鮭、白鮭、紅鮭、樺太鱒、キングサーモン、銀鱈、真鱈、オヒョウ、ロックフィッシュ、ニシン、ボタンエビ、イクラ、サーモンの白子、など。

漁法:

トロール、刺し網、巻き網

最新機器と設備によるチェック:

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魚をカットする機器など機械化が進んでいるカット加工ではサーモンの大きさはセンサーで判別し、カットされる。サーモンはフィレからポーションカットまで規格毎に真空パックし、余った部位はフレークなど2次加工品として利用する。
ここでは6つのフリーザーを所有し、1日で125トンものサーモンが生産される。-20~-30℃で温度管理された9つの冷凍庫には12,050トンの魚を保管しているそうだ。 また、品質検査を行う責任者が各工程に配置されている。

加工施設の視察 – Sitka Sound Seafoods –

・・・「持続可能な漁業をしていく」
独自の基準シートで出港日、魚の形態(頭つき、なし)、状態など細かい部分までチェック。
例:75%のウロコがついているか
ネットの大きさや漁場
5日以内にサーモンを工場へ搬入する

取り扱い商品:

キングサーモン、銀鮭、白鮭、樺太鱒、紅鮭、銀鱈、真鱈、オヒョウ、鮃類、ダンジネスクラブ、
にしん、数の子、イクラ、など。

漁法:

トロール、刺し網、巻き網

厳しいチェックのもと管理されたサーモン:

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トロール漁で釣り上げられたサーモンは船上で2度洗うが、加工場でさらに丁寧に洗われ、腹を氷で手当てし高鮮度の状態で届けられる。1尾ずつ丁寧に処理さ れたサーモンは身に弾力があり、腹もきれいな状態で加工場に運ばれていた。生のまま出荷するか冷凍品として出荷するか、加工場到着後に目の色、皮の色、弾 力をチェッ クし、振り分けられる。網でとったものは、冷水で管理され加工場に到着する。加工場内で下処理し、劣化しているサーモンは養殖魚の餌として他州で使用される。

トロール漁視察

ブルース・ゴアがこだわるトロール漁

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トロール漁とは全て1本釣りで行われる漁のこと。写真は他のトロール漁船の様子。釣り上げるまでの要領はブルース船団と同様である。トロール漁で釣り上げられた魚は高品質であり、すぐさま船上凍結するブルースの魚は味も鮮度も良い。他のトロール漁と品質の違いは明らかだ。世界 的な視野からみると養殖は全体の70%を占める。天然は約30%である。ブルースの見解によると、30%中2%がトロール漁で、船上凍結をする割合は1% にも満たないという。アラスカのシーフードは全て天然であるが、30%のうち、約85%をアラスカが占めると考えている。

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巻き網をしている船の様子を見学した。網の長さは約600mあり、大きな一隻の船から小さなボートが少しずつ引き伸ばし、30分かけ一つの大きな円にする。1回の巻き網漁で約10,000尾もの魚が捕れる。 ブルースのトロール漁と比較すると約1年半分に相対する。巻き網漁のほうが効率的かもしれないが、船上凍結するトロール漁と巻き網漁では、味の違いは明らかである。ブルースは食のための漁をしていくようになる。

シアトル市内視察

Farmers Market

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ダウンタウンは多くの人々でにぎわっていた。市場の中はさらに多くの人々が行き交い、魚介類、フルーツ、花、民芸品などが販売されている。その中でも観光 客が足を止めてしまう魚屋がある。お客様から注文が入ると一斉におおきな掛け声がかかり、注文の魚を店のカウンター内にいる人間に投げる。観光で来ている 子供もカウンター内に入り、魚をキャッチする体験ができるなど、ユーモア溢れたパフォーマンスは人々を魅了している。

Quality Food Centers

一般的なスーパーマーケット。こちらも魚は量り売り。パック詰めやビニール袋に包まれた売り方はしていない。

Whole Foods Market

品物にこだわりを持っている。日本でいう高級スーパーで、商品の陳列もきれい。

MSCとは?

Whole Foods Marketは商品にこだわりを持っている。主に冷凍品や冷蔵を要するものにMSC商品が多く見られる。MSCは国際的な非営利団体で海産資源を確保し、漁獲調整のできる経営者を応援し推奨している。持続性と漁獲管理能力のある漁業に対し、MSC独自の漁業認定証を発行している。

出張を終えて

アラスカは資源をとても大切にしている。持続可能な漁業を行っていくために、禁漁期間の定めや汚染物の規制など、州法で厳格な基準が設けられている。今 回の出張ではきれいな海を守り続けている姿勢を強く感じた。未来への資源を確保しつつ、海の恵みを分けていただいているという漁師たちの考えに、私は衝撃 を受けた。
出張へ行くまで私の中にあった「品質の良いもの=国産」という概念が見事に崩された。私たちは、
食文化への意識が高く、信頼性・安全性ともにレベルの高いアラスカの水産業を見習わなくてはならない。