2026.10.19

飲食店ができるSDGsの取り組みとは?食材仕入れで見直したいポイント

卸・仕入れ

魚の仕入れ価格が上がり、メニュー価格や原価率の調整に悩んでいませんか。飲食店では、魚の価格高騰によって利益が圧迫されるだけでなく、これまで使っていた魚種が安定して仕入れにくくなるケースも増えています。
こうした状況では、単に安い食材を探すだけでなく、仕入れ先や魚種、メニュー設計を見直すことが大切です。サステナブルシーフードを取り入れることで、海の資源を守りながら、店舗の価値やお客様への伝え方にもつなげられます。
この記事では、魚の価格高騰が起きる背景や飲食店への影響、SDGsの視点から見直したい食材仕入れのポイントを解説します。魚の仕入れを安定させたい方や、環境に配慮したメニューづくりを考えている方は、ぜひ参考にしてください。

魚の価格高騰が飲食店に与える影響

魚の価格高騰は、単に仕入れコストが上がるだけではありません。飲食店では原価率や利益率への影響に加え、メニュー構成や仕入れ体制の見直しを迫られる場面も増えています。特に海鮮を主力にしている店舗では、価格変動が経営全体に影響するケースも少なくありません。
価格高騰によって現場でどのような課題が起きているのか、具体的に見ていきましょう。

原価率の上昇による利益圧迫

魚の仕入れ価格が上がると、最初に影響を受けるのが原価率です。例えば、これまで安定して仕入れられていたサーモンやマグロ、イカなどが値上がりすると、同じ価格で料理を提供していても利益が減ってしまいます。
しかし、飲食店ではすぐにメニュー価格へ反映できるとは限りません。値上げによって来店頻度が下がる可能性もあるため、多くの店舗が価格転嫁に慎重になります。その結果、利益を削りながら営業を続ける状態になりやすく、経営負担が大きくなってしまいます。
また、魚は天候や漁獲状況による変動も大きいため、一定価格での仕入れが難しい食材です。急な価格変動が続くことで、月ごとの原価管理が不安定になりやすい点も課題といえます。

定番メニューの継続リスク

人気メニューほど、使用する魚種が固定されているケースがあります。しかし、特定の魚の価格が大きく上がると、定番メニューを維持すること自体が難しくなる場合があります。
例えば、以前は使いやすかった魚が高騰したことで、利益がほとんど残らなくなるケースもあります。そのため、内容量を調整したり、別の魚種へ変更したりする店舗も出てきます。
ただし、急な変更はお客様の満足度にも影響するため、慎重な判断が必要です。価格維持だけを優先すると品質低下につながる可能性もあるため、「どの魚を、どの形で提供するか」を改めて考える必要があります。

仕入れ価格を転嫁しにくい課題

飲食店では、原材料費が上がったからといって、すぐに販売価格へ反映できるわけではありません。周辺店舗との価格差や、お客様の感じ方を考慮する必要があるためです。
特にランチ営業や居酒屋業態では、価格帯への期待値が明確なため、数百円の値上げでも来店動機に影響することがあります。そのため、多くの店舗が「値上げせずにどう利益を確保するか」という課題に直面しています。
こうした状況では、単純に安い魚を探すだけでは限界があります。魚種の見直しやロス削減、仕入れルートの改善など、複数の工夫を組み合わせることが大切になります。


魚の価格高騰が続く主な要因

魚の価格が上がる背景には、ひとつの理由だけではなく、複数の要因が重なっています。漁獲量の変化や物流費の上昇に加え、世界的な需要増加なども影響しているため、短期間で価格が落ち着きにくい状況となっています。
現在の水産業を取り巻く変化を知ることで、飲食店としてどのような備えが必要か見えてきます。

漁獲量の減少と水産資源の変化

近年は、一部の魚種で漁獲量の減少が続いています。水産資源には限りがあるため、獲りすぎや環境変化によって資源量が減ると、供給量も少なくなります。その結果、市場価格が上昇しやすくなります。
特にサンマやスルメイカなどは、以前と比べて漁獲量の減少が話題になることも増えました。魚種によって状況は異なりますが、安定して仕入れられていた魚が、以前ほど手に入りやすいとは限らない状況になっています。
また、魚は自然環境の影響を受けやすいため、毎年同じ量を確保できるわけではありません。こうした背景から、価格が変動しやすい状況が続いています。

燃料費や物流費の上昇

魚の価格には、漁業そのもののコストだけでなく、輸送や保管にかかる費用も大きく関係しています。特に燃料価格が上がると、漁船の運航コストが増え、仕入れ価格にも影響しやすくなります。
さらに、水産物は鮮度管理が重要になるため、冷蔵・冷凍輸送が欠かせません。物流費や電気代、人件費などが上がると、流通全体のコストが積み重なり、最終的な仕入れ価格にも反映されやすくなります。
飲食店側から見ると「魚だけが高くなっている」ように感じる場合もありますが、実際には漁業から流通まで、さまざまな費用の上昇が重なっています。

気候変動による漁場の変化

海水温の変化は、魚が生息する場所や漁獲時期にも影響を与えています。これまで安定して獲れていた地域で漁獲量が減少したり、別の地域で多く獲れるようになったりするケースも見られます。
漁場が変化すると、漁業者側では移動距離や操業方法の見直しが必要になるため、コスト増加につながる場合があります。また、漁獲量が読みにくくなることで、市場価格も不安定になりやすくなります。
飲食店にとっても、季節ごとの仕入れ計画が立てにくくなるため、これまで通りの魚種に依存しすぎない工夫が必要です。旬や産地を柔軟に取り入れる視点が、安定した仕入れを支える要素になります。

海外需要の拡大と輸入価格の上昇

日本国内だけでなく、海外でも魚介類への需要は高まっています。特に寿司や刺身などの人気が広がったことで、日本でよく使われる魚種の国際的な需要も増加しています。
需要が増えると、輸出向け価格が上昇し、日本国内での仕入れ価格にも影響が出やすくなります。さらに、円安が進むと輸入コストも上がるため、海外産の魚であっても価格が下がりにくい状況になります。
以前は「輸入魚なら安い」というイメージもありましたが、現在は海外市場との価格競争が起きているため、一概に安定価格とはいえません。国内外の市場変化を踏まえた仕入れ判断が求められています。


飲食店がSDGsに取り組む意味

魚の価格高騰が続く中で、飲食店には「安く仕入れる」だけではない視点が求められるようになっています。近年は、環境への配慮や持続可能性を意識して店舗を選ぶお客様も増えており、食材選びそのものが店舗の印象に関わる場面もあります。
SDGsへの取り組みは難しく感じるかもしれませんが、仕入れやメニューの工夫から始められる内容も多くあります。

海の資源を守る食材選び

魚を扱う飲食店にとって、水産資源を守る視点は欠かせません。限りある資源を使い続けるためには、将来を見据えた食材選びが必要です。
例えば、漁獲量が減少している魚種ばかりに依存すると、将来的に安定した提供が難しくなる可能性があります。そのため、資源管理が行われている魚や、持続可能性に配慮された水産物を選ぶ動きが広がっています。
こうした取り組みは、単なる環境対策ではありません。将来の仕入れリスクを減らす考え方にもつながるため、飲食店にとっても見直す価値があります。

店舗価値を高めるメニュー提案

近年は、料理のおいしさだけでなく、「どのような食材を使っているか」を重視するお客様も増えています。そのため、仕入れへの考え方が店舗の印象に影響する場面もあります。
例えば、旬の魚を積極的に取り入れたり、環境に配慮した水産物を使ったりすることで、店舗独自の価値として打ち出しやすくなります。価格だけで勝負するのではなく、「選ばれる理由」を作りやすくなる点もメリットです。
また、SDGsへの取り組みを無理なく伝えることで、環境配慮を重視するお客様にも店舗の姿勢が届きやすくなります。食材への考え方を発信することは、価格だけではない選ばれ方を作るきっかけになります。

お客様に伝わる仕入れの姿勢

どのような魚を、どのような考えで仕入れているかは、お客様にも伝えられる大切な情報です。例えば、産地や旬を丁寧に説明したり、持続可能性に配慮した魚を紹介したりすることで、料理への安心感や信頼感につながります。
特別な説明を長く行う必要はありません。メニュー表や店内POPなどで簡潔に伝えるだけでも、店舗の姿勢は伝わりやすくなります。
また、価格が上がっている理由を丁寧に伝える姿勢も大切です。すべてのお客様にすぐ理解されるとは限りませんが、品質や持続可能性を守るための工夫を示すことで、店舗の考え方は伝わりやすくなります。


魚の仕入れで見直したいSDGsの取り組み

魚の価格高騰が続く中では、仕入れ方法そのものを見直すことが重要になります。価格だけを基準にすると、品質や供給の安定性に課題が出る場合もあるためです。
近年は、持続可能性を意識した水産物や、未利用魚の活用など、飲食店でも取り入れやすい選択肢が増えています。

  • サステナブルシーフードを取り入れる
  • 認証水産物を活用する
  • 未利用魚や低利用魚をメニュー化する
  • 旬の魚を柔軟に取り入れる

仕入れの考え方を少し変えることで、原価対策とSDGsの両立を考えやすくなります。

サステナブルシーフードの活用

サステナブルシーフードとは、水産資源や環境に配慮して生産・漁獲された魚介類のことです。将来にわたって魚を食べ続けられるよう、資源管理や環境負荷に配慮している点が特徴です。
以前は一部の高価格帯店舗だけの取り組みと思われることもありましたが、現在では一般的な飲食店でも導入しやすくなっています。冷凍品や加工品など、扱いやすい商品も増えているため、業態に合わせて検討しやすい選択肢です。
また、持続可能性に配慮した魚を取り入れることで、仕入れの考え方をお客様へ伝えやすくなります。価格や味だけでなく、資源への配慮も含めて食材を選ぶ姿勢は、メニューに意味を持たせる要素になります。

MSC認証やASC認証の水産物

持続可能な水産物の目安として活用されているのが、MSC認証やASC認証です。
MSC認証は、適切に管理された漁業で獲られた天然水産物に与えられる認証です。一方、ASC認証は、環境や地域社会に配慮して養殖された水産物が対象となっています。
認証水産物を取り入れることで、仕入れ基準を明確にしやすくなる点がメリットです。また、お客様へ説明しやすい指標にもなるため、メニュー表や販促物でも活用できます。
認証水産物は、仕入れ基準を作りたい飲食店にとっても取り入れやすい選択肢です。メニュー表や店内POPで簡潔に説明できるため、環境に配慮した食材選びをお客様へ伝えやすくなります。

未利用魚や低利用魚の活用

未利用魚や低利用魚とは、サイズが不ぞろいだったり、知名度が低かったりする理由で、十分に流通していない魚を指します。味や品質に問題がなくても、規格に合わないために市場で評価されにくい魚もあります。
こうした魚を活用することで、食材ロスの削減や水産資源の有効活用につながります。仕入れ条件によってはコストを抑えられる場合もありますが、安定供給には差があるため、日替わりメニューや季節メニューと相性のよい選択肢といえます。
ただし、未利用魚は安定して同じ魚種を仕入れられるとは限りません。そのため、「本日の魚料理」や「季節の鮮魚メニュー」のように、魚種を固定しない形で取り入れると無理なく活用しやすくなります。

旬の魚を生かしたメニュー設計

旬の魚は、魚種によって流通量が増えやすく、味の面でも魅力を出しやすい食材です。魚の価格高騰が続く中では、特定の魚種にこだわりすぎるよりも、季節ごとの魚を取り入れる方が仕入れの安定を図りやすい場合があります。
例えば、メニュー名を「本日の鮮魚」や「季節の焼き魚」のように設計しておくと、その時期に仕入れやすい魚を柔軟に使えます。魚種を固定しないことで、価格変動への対応もしやすくなります。
また、旬の魚を使うことは、お客様への訴求にも役立ちます。季節感のある料理は飲食店の魅力になりやすく、仕入れ改善とメニュー価値の向上を両立しやすい方法といえます。


価格高騰に備える仕入れ改善のポイント

魚の価格高騰に対応するには、仕入れ先や魚種、在庫管理を見直すことが重要です。値上げだけに頼るのではなく、仕入れの仕組みを整えることで、原価率の悪化を抑えやすくなります。
特に飲食店では、次のようなポイントを意識すると、価格変動に対応しやすくなります。

  • 魚種を固定しすぎない仕入れ設計
  • 加工品や冷凍品の使い分け
  • ロスを減らす在庫管理
  • 信頼できる仲卸との連携

日々の仕入れを少しずつ見直すことで、無理のないコスト管理と安定提供につながります。

魚種を固定しすぎない仕入れ設計

特定の魚種に依存しすぎると、その魚の価格が上がったときに大きな影響を受けます。特に定番メニューで同じ魚を使い続けている場合、仕入れ価格の変動が利益に直結しやすくなります。
対策としては、魚種を完全に固定しないメニュー設計が有効です。例えば「白身魚のフライ」「季節魚の煮付け」「本日の刺身盛り合わせ」のように表現しておくと、仕入れ状況に合わせて魚を選びやすくなります。
ただし、魚種を変える場合は、味や食感、調理方法との相性を確認する必要があります。単に安い魚へ置き換えるのではなく、料理としての満足度を保ちながら調整することが大切です。

加工品や冷凍品の使い分け

魚の仕入れでは、生鮮品だけでなく、加工品や冷凍品を上手に使い分けることも大切です。冷凍魚や下処理済みの商品を活用すれば、仕込み時間の短縮やロス削減につながります。
特に人手不足に悩む飲食店では、調理工程を減らせる食材を取り入れることで、現場の負担を軽くできます。また、冷凍品は保存期間を確保しやすいため、急な来客数の変動にも対応しやすくなります。
一方で、すべてを冷凍品に切り替えると、店舗の特徴が薄れる場合もあります。刺身や看板メニューには鮮度の高い魚を使い、揚げ物や煮物には加工品を活用するなど、料理ごとに使い分けることが重要です。

ロスを減らす在庫管理

仕入れ価格が上がっている時期ほど、食材ロスの削減が利益確保を支えるポイントになります。魚は鮮度管理が重要な食材のため、必要以上に仕入れると廃棄リスクが高まりやすくなります。
ロスを減らすには、曜日別の来客数や過去の注文傾向をもとに、仕入れ量を調整することが大切です。また、余った魚を別メニューへ活用できるようにしておくと、廃棄を抑えやすくなります。
例えば、刺身用として使い切れなかった魚を、焼き物や南蛮漬け、まかないに活用する方法もあります。ただし、衛生管理や鮮度の基準を守ることが前提です。無理な再利用ではなく、安全性を確保したうえで活用する必要があります。

信頼できる仲卸との連携

魚の価格高騰に対応するうえで、仕入れ先との関係づくりは重要です。市場の状況をよく知る仲卸に相談することで、価格や品質のバランスが取れた魚を提案してもらいやすくなります。
飲食店側だけで代替魚を探すのは簡単ではありません。調理方法や客単価、メニュー構成を伝えておくことで、店舗に合った魚種や仕入れ方法を提案してもらえる可能性が高まります。
また、サステナブルシーフードや認証水産物に対応している仕入れ先であれば、SDGsを意識したメニューづくりにも取り組みやすくなります。価格だけで判断せず、品質の安定性や提案力まで含めて相談できる相手を選ぶことが、長く続く仕入れ体制につながります。


まとめ|魚の価格高騰にはSDGs視点の仕入れ改善が重要

魚の価格高騰は、飲食店の原価率やメニュー設計に大きく影響します。漁獲量の変化や燃料費、物流費、海外需要の拡大などが重なるため、短期的な値下がりだけを期待するのは現実的ではありません。
大切なのは、価格に振り回されにくい仕入れ体制を整えることです。サステナブルシーフードや認証水産物、未利用魚、旬の魚を取り入れることで、海の資源を守りながら、店舗の価値づくりにもつなげられます。
また、魚種を固定しすぎないメニュー設計や、加工品・冷凍品の使い分け、ロス削減、仲卸との連携も重要なポイントです。魚の仕入れに不安がある場合は、価格だけで判断せず、持続可能性や安定供給の視点も含めて見直してみてください。